成長管理は一般化しているが、開発を許可する場合には、公共施設の充実した開発計画を提案する業者が優先順位をあたえられる制度も定着している。
サンフランシスコでは、オフィス・ビルの床面積の総量規制をおこない、年間四十七万五千平方フィートとした。 また、ロサンゼルスの場合は、実質的にあらゆる業務用地で容積率を三○○%から一五○%とへ大胆に半減させた。
住宅地から出発した成長管理はこのように業務用地にもひろがるのが最近の傾向で、パサディナ、サンタモニカなどの諸都市においても行政側の主導で、業務用地の成長管理がとりいれられている。 改造される国土.東名高速道路の建設(1968年2月)「生活大国」前章では米国の都市計画づくりを点検した。
欧州でも、しっかりした都市計画がすでに「生活大国」を実現している。 日本からの観光客が押し寄せるフランスのパリ。
凱旋門から有名な商店やレストラン、カフェがならぶシャンゼリゼ大通り。 この、世界でもっとも知られている通りから一歩裏に入ると、アパートが昔の姿で同じ高さで立ちならび、人と生活の匂いがぷんぷんする。
欧州共同体の本部があるベルギーの首都ブリュッセル。 市内でも、東京の数分の一の安い料金でテニスができる。
あのこぢんまりとした都会でも、レクリエーションの場所が確保されていつ勺。 フィンランドの首都ヘルシンキ。
若い外交官は住宅の値上りを嘆くが、アパートを購入した住宅ローンは七年で完済だという。 週末は湖のほとりにある両親の別荘で、恋人とサウナやョツトを楽しむ。

旧西ドイツの都市を歩くと、オフィス街、商店街、住宅地が整然と区分けされている。 住宅地の建物の高さも色も統一されていて、美しい町並みをかたちづくっている。
都市の地価は日本の数分の一である。 戦後の日本人は、どの先進国仲間よりも長時間働き、国は世界一の貿易黒字国になった。
政府はいまになって「生活大国」を目指すというが、快適な環境と住宅で生活を楽しみ、老後の住まいや生活が確保されているという当然のことが、いまとなっては多くの日本人にとって夢に終わりそうだと思わせるのがわが国の現状である。 日本以上に戦争の破壊をうけた旧西ドイツの例をみるまでもない。
住宅や公園など生活の質といった面からみると、日本はほかの先進国に立ち遅れていることは否定できない。 外国のこうした状況は、とどのつまり、それぞれの国民の豊かな生活のため、国土をどのように利用するかという国土利用計画、その具体策である都市計画のあり方にたどりつく。
そこで、「日本の国土利用計画はどうだったのか」「都市計画はどうだったのか」という当然の疑問が浮かんここで歴代の政府が、自民党政府ということだが、どのような国土利用を目指したのか、その目標と結果はどうだったのか、ふりかえってみよう。 でくる。

「全国総合開発計画」(全総)は、都市計画法とその二百にもおよぶ関連法の基本となるもので、総合的な国土利用の国家戦略を長期計画としてまとめたものである。 これまで四次の計画があるが、その第一号は、池田勇人の「所得倍増論」を受けた「全国総合開発計画」(一全総)である。
日米安全保障条約の改定をめぐる政治的騒乱のなかで岸信介首相が退陣したのを受けて、池田が首班指名を国会で受けたのは一九六○年七月十八日。 その年の十二月二十七日の閣議で、池田の持論である「所得倍増計画」が国の基本方針として決定された。
この計画をもとに約二年後の一九六二年十月五日に、一全総が閣議決定された。 安保改定という政治の季節を経て、日本はすでに高度経済成長路線に突入していた。
一全総は、日本が「東京、大阪を中心とする資本、労働、』技術など諸資源の集中、集積を通じて発展してきたが、すでに過大都市の問題がおきている。 一方で、農工間格差や辺境意識とあいまって地域格差問題を引き起こした」と、当時の日本の問題点を政府の立場から分析している。
この二つの問題を同時に解決する方策として、一全総は「工業の分散化が必要である」と強調し、具体的政策としては、東京、大阪、名古屋とこれらの都市の周辺をのぞく全国の一定の地域に大規模、中規模、小規模の「開発拠点」をつくり、「すぐれた交通、通信施設によってむすび、東京、名古屋、大阪とこれら以外に形成される開発拠点を中心としたそれぞれの経済圏が有機的に関連しあって均衡のとれた地域的発展が期待できる」とバラ色の将来像を描いてみせた。 一全総は「過大都市の問題」として「既成大工業地帯への過度の集中の結果、用地、用水、輸送力に陰路が表面化している」と述べ、高度成長を支える産業基盤の拡大に力点を置いていた。
そこには「市街地や生活環境の整備をはかる」としていたが、難問が山積している過大都市はもちろん、あらたな「開発拠点」となる都市での快適な市民生活を保障する都市計画への具体的な展望は示されていない。 なるほど、日本はこうした産業政策のもとで、急速な経済発展をとげた。
ところが、一全総の目的とは逆に、東京を中心とした関東、名古屋を中心とした東海、大阪を中心とした近畿でさらに人口の集中が進み、大都市における住宅難など住環境の悪化がさらに深刻化し、地価が高騰した。 一方で人口五万人以下の都市、とくに農村からの人口の流出が加速し、重化学工業を主体とする産業基盤や工場建設のため自然の破壊や公害が全国に広がった。
批判と反省一九六七年四月に外国と日本の都市問題の専門家や学者が集まって、三日間にわたり「地域開発国際シンポジウム」が東京で開かれたが、外国側からは市民の住みにくい日本の都市政策が批判を浴びた。 ギリシャの都市学者、C・ドキシァデス博士は「都市のめざすべきものは、そこに住む市民の幸せである」と力説した。
J・R・ジェイムス英国住宅地方行政省次長は、「ビルの乱開発を防ぎ、市民の住環境を守るためには、英国のように土地の利用に厳しい規制が必要だ」と述べ、米国ニュージャージー州都市計画顧問の。・イルピザカー氏は「都市計画に住民を参加させる重要性」を強調した。 オランダ国立社会研究所次長のJ・。・タイセー氏は「オランダに比べて、日本の土地収用手続きが非民主的であるようだ」と語った。

池田首相の所得倍増計画にたずさわったエコノミストの大来佐武郎は.全総は種の規制が弱かった。 もっと厳しければ、経済成長はもっと低かったろうが、無秩序な都市化、地価の高騰、住宅難はこれほど深刻化しなかったろう」と述べ、川野重任東大教授らは「工業優先が適切な都市計画を阻んでいる」と語るなど、弁明や説明に終始した。
こうしたなかで、一九六九年二月の衆議院予算委員会の総括質問で野党の委員が「都市と農村の格差拡大は、政府が社会開発の方向を忘れ、産業政策本位でやってきたからだ」と批判し一全総の行き詰まりを受けて、新全国総合開発計画(二全総)が佐藤内閣によって閣議決定されたのは一九六九年五月である。 一九八五年を目標年次にした日本の開発戦略で、四つの目標を掲げていた。
人間と自然との調和をはかるため、自然を永久に保護し、保存する、全国土を有効に活用するため、開発の基礎となる条件を整備して、開発の可能性を全国に広げる、地域の特性に応じた国土利用を再編成する。

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